◇ コ ラ ム ◇ パリゼット(写真付)
地元の選挙区の浜松市春野町出身で、宝塚少女歌劇団の全盛時代を支えた白井鐵造氏が一世を風靡した「すみれの花咲く頃」という曲はおよそ80年前のものであるが、今でも誰もがどこかで聴いたことのある有名な曲である。
この曲は昭和5年(1930年)の宝塚月組のレビュー「パリゼット」の中の主題歌の一つであり、もともとドイツのフランツ・デーレの「Wen der weisse Flieder wieder blueht(直訳すると、「白いライラックが再び咲くころに」となる)」(1928年)という曲で、フランスで「Quand refleuririont les lilas blanc」と訳されて大いにヒットした。この曲をパリ留学中の白井鐵造が日本に持ち帰って「ライラック」を「すみれ」に代えて歌詞をつけて宝塚のレビュー曲「すみれの花咲く頃」にしたのであった。
その後、リス・ゴーチェの「パリ祭」とともに初期のフランスのシャンソンの定番となった。「Les lilas blanc」は戦前戦後と日本コロムビアの洋楽盤として日本でも多数発売されて、私も戦前盤と戦後の復刻盤両方持っている。
学生時代フランス語をほんの少しかじった者としてはこの「Les lilas blanc」の歌詞はなかなか興味深い。いわゆるフランス語のリエゾンのお手本がたくさん出てくるし、みごとに脚韻を踏んでいるからだ。
Printemps printemps c’est toi(プラタン、プランタン、セトワ)
Qu’on guette dans les bois
Ou les amants heureux
Vont s’en aller par deux
C’est toi qui feras se pamer tendrement
celle que j’aime eperdument
Printemps j’attends pour la tenir dans mes bras
La complicite des lilas
このような歌い出しから、以下の主題に入る。
Quand refleuriront les lilas blancs
On se redira des mots troublants
Les femmes conquises
Feront sous l’emprise
Du printemps qui grise
Des betises
Quand refleuriront les lilas blancs
On ecoutera tous les serments
Car l’amour en fete
Tournera les tetes
Quand refleuriront les lilas blancs
(以下の歌詞は省略するが、フランス語を多少なりとも学習したものは脚韻を踏んでいることが分かるであろう。)
いずれにせよ、戦前の宝塚少女歌劇団については、欧米のさまざまの歌曲の影響を受けており、それらをカバーしているという点でも興味深い。
以前、和製ジャズと宝塚についてこのブログで紹介したことがあり、また、今から約10年ほど前にある雑誌に戦前の宝塚のレコードについて文章を書いている。併せてご覧になっていただければ幸いである。
「モダンジャズとシャンソン」
「戦前の宝塚レビュー」
(昭和5年日本コロムビアから二枚組で発売された「パリゼット」のSPレコード)