◎ 政 治 ◎ 財政破綻リスクに関する質問主意書
財政破綻リスクに関する質問主意書を提出した。ご参考まで。それにしても答弁書の中身がすごい。ほとんど答えになっていない。再度質問主意書を提出したくなる。みなさんはどう思われるか。
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平成二十三年二月三日提出
質問第四十号
財政破綻リスクに関する質問主意書
衆議院議長 横 路 孝 弘 殿
提出者 城内 実
平成二十二年六月二十二日に、平成二十三〜二十五年度の歳入・歳出の骨格を示す「中期財政フレーム」を含む中長期的な財政健全化の道筋を示す「財政運営戦略」が閣議決定され、『財政運営戦略概要』(以下概要という)の中に、以下のように述べられている。
2.財政破綻リスクへの断固たる対応
現状を放置して、ギリシャ等のように財政破綻に陥るようなことがないようにしなければならない。仮に、そのような状態になれば、財政自主権が失われ、社会保障サービス等の水準が大きく低下し、経済や国民生活に多大な悪影響。
また、菅直人総理大臣も平成二十三年一月八日に「このまま赤字国債を発行するような状態は、二年先は無理だ」と発言(以下総理の発言という)している。これらのことに関して、以下質問する。
一 概要の中に財政破綻とある。これは国の借金が返済不能になるということを意味していると考えるが見解如何。
二 企業の破綻と言えば、債権の放棄が発生する。国の財政が破綻すると、国債は紙くずになると考えるが見解如何。
三 国債が財政破綻により将来紙くずになる可能性があるのであれば、国債を売る際に購入者にその危険性を理解してもらう必要があると考えるが見解如何。
四 国が元本保証するから支払いは問題無いとの見解かもしれないが、財政破綻の可能性があるならその保証は信じられない。過去においても、事実上国債が紙くずになった例があると考えるが見解如何。
五 日銀が市場から国債を買うことにより、事実上政府の財政赤字を日銀が引き受けるのと同等の効果を生じさせることができる。実際、アメリカ連邦準備銀行(FRB)は約一.三兆ドルの米国債を購入し、米国政府の財政赤字を事実上引き受けた。日本政府がこのような方法を許すのであれば、日本の財政破綻は起こりえないと考えるが見解如何。
六 日銀が国債を購入すると、過度のインフレになるという説もあるが、アメリカでは過度のインフレの恐れよりも、むしろデフレの恐れがあり、日本のようにならないようにと神経を使っていると言われている。この例を見ても、日銀が国債を購入するだけで、すぐに過度なインフレになるとは言えず、むしろデフレ脱却の期待が膨らむのではないかと考えるが見解如何。
七 前述の概要の中に、「財政自主権が失われ」とある。これは日本がIMFの支配下に入るという意味と考えるが見解如何。
八 IMFは、外国から借金をしている国において借金の返済が不能になっている場合に、自国通貨を発行させ、それをドルや円などの国際通貨と交換することにより返済を助けている。日本は外貨を十分持っており、IMFへの出資金も世界第二位である。しかも円が国際通貨であるために、IMFの行う交換は全く意味をなさない。つまり現在の国の借金を放置すれば、財政自主権が失われるという表現は正しくないと考えるが見解如何。
九 前掲の総理の発言であるが、赤字国債発行が二年先は無理というのであれば、赤字国債に替わる案があるということだと考えるが見解如何。
十 一月二十一日に内閣府から、経済財政の中長期試算が発表されている。そこに示されているのは、二年先には赤字国債の発行を止めるというのでなく、赤字国債は少なくとも平成三十五年度まで出し続けるというシナリオである。このシナリオは総理の発言と矛盾すると考えるが見解如何。
十一 経済財政の中長期試算で例えば成長戦略シナリオによれば、平成三十五年度には国債費が税収を上回る。国民が納める税収のすべてを使っても国債費を払うことができなくなるという経済は、正常ではないと考えるが見解如何。
右質問する。
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内閣衆質一七七第四〇号
平成二十三年二月十日
内閣総理大臣 菅 直人
衆議院議長 横路 孝弘 殿
衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員城内実君提出財政破綻リスクに関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「財政破綻」は、財政状況が著しく悪化し、財政運営が極めて困難となる状況について記述したものである。
二から四までについて
国債の元金償還及び利子支払については、政府が責任を持って行うこととしている。
五及び六について
日本銀行は、市場への安定的な資金供給のため長期国債の買入れを行っているが、これは、国債価格の買支えや財政赤字のファイナンスを目 的としたものではないと承知している。なお、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第五条は、公債の日本銀行による引受けを原則として禁止している。これは、戦前・戦中に財政需要を満たすために多額の公債を日本銀行による引受けにより発行した結果、急激なインフレが生じたことへの反省に基づき規定されたものである。
また、政府としては、日本銀行において、我が国経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的な経済成長経路へ復帰することが重要な課題であると認識し、金融緩和措置を講じているものと承知しており、「包括的な金融緩和政策」(平成二十二年十月五日日本銀行政策委員会・金融政策決定会合決定)の一環として資産買入れ等の基金による長期国債の買入れ等を行っていると承知している。
七及び八について
御指摘の「財政自主権が失われ」とは、必ずしも御指摘のような意味ではなく、財政運営が極めて困難となり、財政運営の自由度が失われる状況について記述したものである。
九について
御指摘の発言は、国債発行に過度に依存した財政運営はもはや困難との認識を示したものである。
十について
御指摘の「経済財政の中長期試算」(平成二十三年一月二十一日内閣府公表。以下「中長期試算」という。)計量経済モデルを用いて、一定の前提に基づき行っているものであり、中長期試算における各年度の歳出と税収等との差額が、そのまま当該年度における新規国債発行額になることを示しているものではないが、政府としては、「財政運営戦略」(平成二十二年六月二十二日閣議決定)に沿って、平成二十四年度以降の新規国債発行額について、財政健全化目標の達成へ向けて着実に縮減させることを目指し、抑制に全力を挙げることとしている。
なお、御指摘の総理の発言については、九についてで述べたとおりである。
十一について
中長期試算の成長戦略シナリオにおいては、名目長期金利の上昇等を反映して、平成三十五年度の国債費は大幅に増加することとなっており、結果として税収を上回る形となっている。このことは、成長率が高い成長戦略シナリオにおいても、平成三十五年度の財政状況は深刻であることを示している。