衆議院議員 静岡県第7選挙区城内 実

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◎ 政 治 ◎ 「復興増税」に関する質問主意書

2011.12.01 ピックアップ

 先般、政府に「『復興増税』に関する質問主意書」を提出した。被災地復興のためとはいえ、デフレで不景気の現下の状況において「増税」という安易な手段で財源を捻出しようとする政府の姿勢にきわめて大きな疑問を感じたからである。この答弁書が返ってきたので、このブログで紹介させていただく。
 相変わらずの木で鼻をくくったような答弁であるが、皆さんどう思われるか。
 なお、今回の答弁にもとづき、再質問主意書を近々提出する予定である。
 
 
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平成二十三年十一月十五日提出
質問第五〇号
 
「復興増税」に関する質問主意書
 
    提出者 城 内  実
 
   
 
   「復興増税」に関する質問主意書
 
 野田佳彦総理大臣は平成二十三年十月二十八日の所信表明演説において、総額十二兆円を超える平成二十三年度第三次補正予算の財源について、「歳出削減の道」、「増収の道」とともに、「歳入改革の道」に言及し、基幹税である所得税や法人税、個人住民税を時限的に引き上げることに言及した。
 これに先立ち、先月政府税制調査会より発表された震災復興費用を賄う臨時増税について、平成二十三年度の税制改正で予定していた法人実効税率引き下げ幅を三年間圧縮することと、所得税の定率増税を行うことを明らかにした。
 しかし、物価の総合指数であるGDPデフレーター(内閣府発表)で見れば、わが国は平成十年から昨年まで十三年連続してデフレ状態にあり、本年に入ってさらに進んでいる。これは、米国大恐慌の三年六ヶ月(一九二九年十月―一九三三年三月)、さらに大正十二年の関東大震災後の大正十四年から始まり昭和恐慌(昭和五年―六年)後の昭和七年まで継続した昭和のデフレの八年間をはるかに凌ぐ長期間である。今回のデフレが始まる前年の平成九年を基準として本年までの累積デフレ率はほぼ二〇%に達し、一世帯の平均所得は過去十年間で百万円減少している。このような状況の下、東日本大震災からの復興目的とはいえ、増税によりその財源を賄うことは、デフレをさらに加速させ、わが国経済を一段と沈滞させ、恐慌的局面に落ち込ませるものであると考え、以下、質問する。
 
一、 国家経済がデフレにある中で増税を行えば、さらに経済は落ち込み、消費は冷え込み、結果、マイナス成長に拍車をかける事態になるというのは、歴史が証明しているところである。たとえば、大恐慌下の米国は、一九二九年からデフレの状況にあったが、共和党のフーバー大統領はデフレで税収が減ったことを理由に一九三二年、消費税を導入した。その結果、経済活動はさらに冷え込み、同年株価は大暴落、一九二九年比にして九〇%下がった。さらには、国民所得は一九二九年比で四七%下落した。以上のような歴史的事実について、認識如何。 
 
二、 野田政権は、歳出削減や税外収入を除き、復興財源の大部分を増税によって賄おうとしているが、増税に依らなくても財源は特別会計の剰余金を充当することで捻出が可能である。特別会計には現在、数十兆円の剰余金(いわゆる「埋蔵金」)があり、このうち多くは増税に代わる復興財源として活用できるものである。特に、平成二十一年度で十九.七兆円ある財政投融資資金の決算後積立金残高、平成二十二年度の国債整理基金の決算後積立金十三.七兆円、そして外国為替資金の決算後積立金十九.六兆円などは、すぐに取り崩し活用できる資金であると考える。とくに国債整理基金の平成二十二年度決算後の積立金十三.七兆円を取り崩せば、復興資金はすべて賄える。この十三.七兆円は国債が市場で売れなくなったときの国債購入資金であると言われているが、新規国債が市場で売れなければ、日本銀行が既発債を市場で購入して市場での流動性を供給するなどの操作をすれば、新規国債は十分市場で売却できると思われる。これこそが中央銀行の責務であり、他国でもこうしたことは行われている。よって、国債整理基金十三.七兆円はすぐに放出できる資金であると言える。以上の資金について、その存在の有無について、また、これをあえて使わない理由如何。 
 
三、 二に関連して、こうした資金を増税により賄う代わりの資金として活用するという見解について、認識如何。
  
四、 野田政権は、今後二十五年の長期間所得税を増税する一方で、法人税を恒久的に五%引き下げる方針を決定した上で、当初の三年間だけ臨時増税を課す方向であるが、この三年間の臨時増税期間でも、法人税は減税となっている。法人税については「財政危機を起こしている国は法人税を引き下げている」という歴史的な事実がある。その典型的な実例が米国である。一九八一年からのレーガン大統領は それまでの最高税率四六%を三四%まで下げ、さらに減価償却期間を短縮するなどして法人実効税率を大幅に下げた。さらに所得税の最高税率を大幅に下げた富裕層優遇政策の結果、財政赤字が拡大し、米国は債務国に転落し、その後の今日に至る財政赤字の主因になっている。また、英国は法人税引き下げ分を消費税増税で補おうとして暴動がおこり、アイスランドは法人税を極端に引き下げて財政が破たんした。さらに、ギリシャにおいては、法人税が引き下げられ、消費税を引き上げるという、わが国の政策にも似た税制改革を行った結果、今般の欧州経済危機の発端となった。こうした事実について認識如何。 
 
五、 四に関連して、法人税については、減税するよりも、最高税率を引き上げることにより、平成十三~二十一年で二十五兆円あるといわれる大企業の剰余金を吸い上げ、復興財源に十分充当できるとともに、所得税増税の必要もなくなると思われるが、見解如何。 
 
六、 野田総理は、所信表明演説で「今日生まれた子ども一人の背中には、既に七百万円を超える借金があります」と述べた。「今日生まれた子ども」とは新生児を指すと思われるが、なんらの経済活動を行ったこともない新生児に七百万円の借金があるとする論拠如何。 
 
右質問する。
 
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内閣衆質一七九第五〇号
  平成二十三年十一月二十五日
       内閣総理大臣 野田 佳彦
衆議院議長 横路 孝弘 殿
衆議院議員城内実君提出「復興増税」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
 
 
衆議院議員城内実君提出「復興増税」に関する質問に対する答弁書
 
 
一及び四について
 アメリカにおいて、千九百三十二年に、工業製品消費財に対する個別間接税が導入され、千九百八十年代に、法人税の基本税率の引下げや所得税の最高税率の引下げ等が行われたことは承知している。
 イギリスにおいて、本年一月に、付加価値税率が引き上げられ、同年四月に、法人税の基本税率が引き下げられたことは承知している。
アイスランドにおいて、二千二年に、法人税の基本税率が三十パーセントから十八パーセントへ引き下げられたことは承知している。
ギリシャにおいて、二千年代に、法人税の基本税率が漸次引き下げられ、二千五年に、付加価値税率が引き上げられたことは承知している。
 なお、これらの国の経済・財政状況等については、様々な要因の影響を受けていると考えられ、税制改正のみを取り上げてその関係を一概に結論づけることはできないものと考える。
 
二について
 平成二十一年度決算処理後における財政投融資特別会計財政融資資金勘定の積立金は約四・九兆円であるが、財政投融資特別会計財政融資資金勘定の積立金については、平成二十三年十月二十八日に国会に提出した東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案(以下「復興財源確保法案」という。)第三条において、平成二十四年度から平成二十七年度までの間、予算で定めるところにより、国債整理基金特別会計に繰り入れることができることとしており、復興財源確保法案第九十三条第二項において、この繰入金は復興債の償還費用の財源に充てるものとしている。平成二十四年度においては、平成二十三年度末の同勘定の積立金の見込額約〇・一兆円と平成二十三年度に生じる同勘定の剰余金の見込額約〇・七兆円の合計額である約〇・八兆円を同勘定から国債整理基金特別会計に繰り入れることが可能であると見込んでいる。
 平成二十二年度決算処理後における国債整理基金特別会計の国債整理基金は約十三・七兆円であるが、国債整理基金は、特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号。以下「特別会計法」という。)第三十八条第一項の規定に基づき、将来の国債償還の財源とするために置いているものであることから、これを取り崩し、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源(以下「復興財源」という。)に充てるのは適当でないと考える。
 平成二十二年度決算処理後における外国為替資金特別会計の積立金は約二十・六兆円であるが、外国為替資金特別会計の積立金は、特別会計法第八十条第一項の規定に基づき、剰余金のうち、外国為替相場の変動、市場金利の変動その他の要因を勘案し、同会計の健全な運営を確保するために必要な金額を積み立てているものであることから、これを取り崩し、復興財源に充てるのは適当でないと考える。
 
三について
 復興財源については、歳出削減や税外収入の確保に努めることにより、復興特別所得税等の東日本大震災からの復旧・復興のための時限的な税制措置による負担をできるだけ抑制していくことが重要であると考えており、復興財源確保法案は、このような考え方を反映させたものとして作成し、国会に提出しているものである。
 
五について
 東日本大震災からの復旧・復興のための時限的な税制措置は、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合うことを基本とし、個人にも企業にも過大な負担とならないよう配慮した上で、時限的に一定の負担を求めるものである。こうした中で、法人税については、産業空洞化防止等の観点から、「平成二十三年度税制改正大綱」(平成二十二年十二月十六日閣議決定)で示した税率の引下げと課税ベースの拡大を実施した上で、時限的に法人税額に対して付加税を課すこととしている。
 
六について
 お尋ねの所信表明演説における表現については、平成二十三年六月末時点の国債及び借入金の残高約九百四十四兆円を平成二十三年五月一日時点の日本の総人口約一億二千七百七十四万人で除した額約七百三十九万円を、新生児も含む全ての国民一人当たりの債務として捉えたものである。