◎ 政 治 ◎ IMF・世銀総会
IMF・世界銀行の年次総会が48年ぶりに東京で開催され、14日に閉会した。しかしながら、「世界第二の経済大国」中国は、閣僚はじめ多くの幹部が欠席した。尖閣諸島をめぐる日本政府への抗議が理由だと言うが、国際会議に二国間外交の問題を持ち込む中国の姿勢はとても「大国」のものとはいえない。
わが国は、中国不在をむしろ好機ととらえ、不当に安い人民元の問題など中国の無責任を声高に主張するべきであるが、逆に中国人民銀行の副総裁(代理出席)に、「人民元の為替相場が均衡水準に非常に近い」などとアピールされる始末である。
また、この年次総会自体、その盛り上がりは、当時の田中角栄大蔵大臣が先頭に立って経済外交を演出した48年前とはまったく比べ物にならないという。英国『エコノミスト』が「日本はお粗末な主催国」と酷評しているらしいが、実質的ホストであるわが国財務省は一体何をやっているのか。
そのせいではないだろうが、IMFは、世界各国の財政に関する報告書でわが国に関し、消費増税法案成立を歓迎しながら、10%の税率では政府債務を減らすには不十分と指摘した。IMFはこれに先立つ6月、消費増税法案成立を目の前に、日本は消費税率を少なくとも15%に引き上げることが望ましいとの声明を発表している。ふざけるなと言いたい。
IMFは国への融資にあたり、政策改善を条件とする「構造調整プログラム」と称する内政干渉を行っている。これ自体おかしいことだが、これもあくまで融資を行うにあたってのものだ。融資を受けるどころか世界第二位の出資金をIMFに拠出している国に言うべきことではない。日本は完全になめられている。
わが国は当然、こうした要求を非難し拒否すべきであるが、そうならないのはなぜか。それはある意味で、IMFが行っているのは「内政干渉」ではないからである。
『週刊ポスト』に、IMFが財務省にとって21人もの出向者を送り込む「超優良天下り先」であり、副専務理事の篠原尚之氏は消費増税を主導した勝栄二郎前財務事務次官の財務省同期であるという記事が載っているが、要は、財務省は自らの権限を維持し省益を実現するためにIMFを利用して自らの国に圧力をかけているということである。日本に関するIMF(発言者名なし)の発言は大方財務官僚の出向者が書いているのではないか。非常にけしからぬことである。
私は、将来にわたる社会保障費捻出のためにも消費増税自体に反対しない。しかし、消費増税より喫緊の課題は当然、デフレからの脱却である。安倍晋三先生も「消費税増税はデフレ脱却が前提」と主張し、総裁選に当選された。安倍総裁には、手を変え品を変え行われる財務省の圧力に屈することなく、デフレ脱却に向けた政策を堂々と打ち出し、野田総理が開会を明言した次期臨時国会において論戦を行っていただきたい。